日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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1021944年頃まで、イスラーム関係の出版物は多く刊行されている。1940年、岩波新書の『回教徒』は元イラン公使の笠間呆あき雄の著作であり、同新書の中野好夫著『アラビアのロレンス』もよく読まれた。また小林元が『回回』を博文館から刊行。さらに翌年博文館から出版された井筒俊彦著『アラビア思想史』はイスラーム哲学・神学を解説した名著であり、再販され今なお価値ある稀有の書である。井筒俊彦博士(東京・1914〜93年)は、言語哲学専攻で世界諸言語に通じ、アラビア語もイブラーヒーム師に学び、岩波文庫『コーラン』の邦訳もあるが、イスラーム研究の世界的権威として国外の評価が高い。また同年に前島信次の『アラビア民族史』が出版され、戦後は慶應義塾大学教授となりアラブの歴史を広く紹介した。太平洋戦争時のイスラーム活動1941年12月8日、対米英戦を発動して太平洋戦争に突入した日本軍は、翌年6月までに東南アジアのほとんど全地域を支配下に置き、占領地域では軍政を敷いて行政に当った。現地では宗教対策が必須となり、インドネシア、ボルネオ、ニューギニア諸島、マレー半島、インド東部、フィリピンの一部等でイスラーム宣せん撫ぶ工作が重要視されることになった。ここで参謀本部は「大日本回教協会」の林銑十郎、若林半、須田正継らに協力を要請し、「東京イスラム教団」の鈴木剛、郡正三、松林亮などと協議した。こうしてイスラームに入信した日本人ムスリムの人材が、各方面に分散されることになる。

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