日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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158イスラームと日本の仏教は、そもそもその歴史が異なっている以上、水と油のような縁遠い関係であっても何も不思議はない。そのような前提を踏まえるとしても、その割には両者の間に共通点や類似点が多くの側面で見られるのは、実に不思議なものである。本論ではそのような近似性の諸点を振り返ってみることとする。そしてそのような近似性はどのような意義を持つのかについて、一考してみたい。両宗教を対比するとしても、その方法には特段定められたものはない。イスラームでは一日の間に、五回礼拝することが義務となっていることは知られている。他方、仏教では元来それは一日六回であった。このような儀礼面での、しかも具象的な事例に関する比較をするのも興味が惹かれるだろう。しかし以下においては、信仰の真髄や信心のあり方といった、より中枢の諸点を優先することとする。その後から、多少それ以外で注目される点にも論を及ぼすこととしたい。一.信仰の真髄さっそく両宗教の最も本質的な、信仰の真髄という論点を突くことにしよう。両者対比の結論から言ってしまうと、信仰上の教義は大いに異なるが、それらの概念的な構造はほぼ同様と言えそうだ、ということである。まずイスラームの教えの中軸は、次のように整理できる。「永遠の主であるアッラーにすべてが依拠している事実を明めい澄ちょうに認識して、日々の言動をその確信に基づかせること。そしてこのアッラーこそ、有形無形のすべての事物の根拠であり原因であり、それらす

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