日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
167/220

163イスラームと日本の仏教 ―無関係からの出発―さらに補足すると、信仰の段階論として以下のように説かれる。信心には三段階ある。第一には言動で教義に則のっとること(イスラーム)。第二に内心の問題として、信仰箇条をしっかり確立し順守すること(イーマーン)。第三には、信心に基づきあらゆる善行を積むと同時に、常にアッラーを身近に感じる最も敬けい虔けんな段階(イフサーン)である。これが最も熟した完成度の高い信心のあり方として位置付けられている。預言者伝承に次のようにある。「イフサーン(善行)について述べよ」と問われたのに対し、預言者ムハンマドは答えて言った、「あたかも目前に座すかのようにアッラーを崇あがめることです。あなたにアッラーを拝することができなくても、アッラーはあなたを見ておいでになるからです。」と。六以上に見た両宗教における信心のあり方は、むしろ共通点が多いというのが、読む人の率直な読後感ではないだろうか。そしてさらには、良きムスリムの与える印象と、良き仏教徒が持っている雰囲気とは、余りに同質なことに驚かされてきたというのが、過去半世紀に渉わたる筆者の偽らざる感想でもあることをここに付記しておきたい。三.人間の捉え方以上の、信仰の真髄と信心のあり方がイスラームと仏教の対比上、最重要な論点であろう。しかし、思案するに意味のありそうな論点としては、それ以外にも幾つかある。その第一は、両宗教において、人間はどのように位置づけられているのかというポイントである。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です