日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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16イスラームの生誕地イスラームは今から14世紀前に、アジアの西端に位置するアラビア半島で生まれた。西暦で言えば7世紀前半のことで、イスラーム暦の元年は西暦では622年にあたっている。この年に、マディーナという町に小さなイスラーム共同体が誕生し、その後イスラームの教えが世界に広がる中核となった。宗教としてのイスラームが始まったのは、もう少し前のことで、西暦610年頃、マッカの町に暮らしていたムハンマドが預言者と自覚するようになった時であった。「預言者とは何か」ということは、イスラームとは何かと深く関わっている。その内容は、もう少し後で詳しく考えることにしたい。当時のマッカは、商人の町であった。アラビア半島は西アジアの乾燥地帯で、砂漠が広がる中にオアシスなどの水源があると、人びとが定住し、町を作った。マッカは、人間が住める程度には水源があったが、農業をするほどではなかった。そのかわり、南方にあるイエメンと北方の地中海地域との中間の好位置にあったため、貿易に従事し、商業が発展することになった。中東のあたりは「文明の十字路」と呼ばれ、古くから東西の民族や文物が交流してきた。ところが当時、このあたりの支配権をめぐってササン朝ペルシアとビザンツ帝国が争っていたため、従来の交易路が衰えていた。そこで、アラビア半島よりも北に位置していた従来の交易路にかえて、マッカ商人たちが紅海側の通商路を開拓したのであった。彼らはインド洋を渡ってイエメンに届く産物を地中海地域へと運び、また、その逆のコースで地中海地域の産物をイエメンへと届けるキャラバン貿易を発展させた。遠隔地へのキャラバン隊の旅は危険が伴い、交易には大きなリスクもあった。それを生業とするマッ

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