日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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24で虚言とは言われなかったが、「ジン(幽精)に憑つかれた」「巫ふ者しゃである」「(超人的な)詩人であろう」などと言われた。イスラームが最終的に勝利したのは、アラビア半島の人びとがクルアーンを言語的な奇跡と認め、その教えに帰依したからであった。それ以降、イスラームがアラビア半島の外に出て、アジア、アフリカの東西に広がるとともに、この言語的な奇跡という立場が非アラブの信徒たちにも広まり、アラビア語はイスラーム世界にとって聖なる言語となった。天から下された神の言葉、という考え方から、クルアーンにはそれ以外の言葉を一切書き加えないという原則も生まれた。つまり、クルアーンはムハンマドが「これが啓示である」として伝えた言葉以外、何も記録されていない。ふつうであれば、先に引用した凝血章の冒頭も、「これは預言者ムハンマドがヒラーの洞窟で受け取った啓示である」という説明くらいありそうなものである。しかし、クルアーンのその箇所を見れば、いきなり、「読め!」とあるだけで、誰が誰に言ったかも、どのような状況だったかも説明されていない。クルアーンを手にする読者は、一切説明のない7世紀の言葉に直接出会うわけで、一般の読者が「クルアーンはわかりにくい」とこぼすのも当然のことであろう。一神教の系譜イスラームについて、一般の日本人から見て理解しにくいことの一つは、唯一絶対の神の言葉が、特

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