日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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25イスラームとは定の時代に特定の人に下されている、という点であろう。宇宙が整然とした法則によって運行していることから、超越的な絶対存在があると考える人は多い。そのような人にとって、「絶対神」というものはよくわかる。しかし、宇宙を超えた絶対者が人間に特定の命令を下す、ということは不可解に思える。確かに、マッカに向かって日に5回祈る、毎年1ヶ月の断食月があって、その月には毎日夜明け前から断食を始め、日没まで飲食を断つ、というような具体的なことが、なぜ絶対神から命じられるのか、という疑問は正当なことのように思える。あるいは、なぜ、啓示が下ったのが7世紀のアラビア半島で、ムハンマドという人だったのか、という疑問もありうる。ほかにもたくさんいる諸預言者の中の、とある一人がムハンマドであるなら、理解できるが、ムハンマドが人類全体に遣わされた最後で最大の預言者であるというのであれば、なぜ、7世紀のアラブ人だったのか、という疑問を持つ人がいても不思議ではない。このことを理解するためには、一神教の系譜というものを考える必要がある。ユダヤ教、キリスト教、イスラームは通常、セム的一神教と呼ばれ、唯一神を信じる姉妹宗教とされている。「セム的」というのは、セム諸語(ヘブライ語、アラム語、アラビア語など)で「神の啓示」が語られるところからの命名であるが、かといって「セム的」ではない一神教があるわけではない。今日この系譜の一神教を信じる人びとは世界人口の過半に及ぶが、要するに、唯一神の信仰と、創造神からの啓示という原理に基づく宗教は、この地域で誕生して世界に広がったのである。超越的な唯一神が、人間に対しては特別なことを語りかけるという理解は、この系譜の中では当然のこととされる。この地域には、メソポタミアからシリアにかけての肥沃な三日月地帯、エジプト、アラビア半島など

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