日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
30/220

26が含まれている。筆者はここを「セム的一神教の故地」と呼んでいるが、「セム的」という外からの呼称ではなく、本人たちの言い方を借りるのであれば「アブラハム的一神教」と言うこともできる。旧約聖書のアブラハムは、クルアーンでは「イブラーヒーム」と発音されるが、「諸預言者の父」とされる。彼は純粋な一神教を説いたが、子イサクの系譜からモーセやダビデが現れ、ユダヤ教に発展し、またその子孫からイエス・キリストが登場し、キリスト教が誕生した。他方、旧約聖書には、アブラハムのもう一人の子イシュマエルからアラブ人が生まれたことが記されている。クルアーンでは「イスマーイール」と発音されるが、彼の子孫がアラブ人の諸部族であり、その中から登場したのがムハンマドである。実際に、クルアーンは、イスラームがイブラーヒーム(アブラハム)の純粋一神教の再興をめざすものであることを宣言している。そもそも、カアバ聖殿を神の命令で建設したのは、イブラーヒームとその息子イスマーイールとされる。また、イスラームはエルサレムが聖なる都であることを認め、二大聖地に続く第三の聖地としている。ムハンマドという模範教義について前述したように、唯一神の信仰と合わせて、ムハンマドを使徒と認めることがイスラームの根幹をなしている。ムスリムにとって、ムハンマドが弟子たちに与えた教えは、聖典クルアーンに次ぐ重みを持っていた。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です