日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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29イスラームとは8世紀半ばに成立したアッバース朝は、その後5世紀も続くが、特に8〜10世紀に首都バグダッドなどを中心に大きく栄えた。バグダッドでは「平安の都」と名付けられた円形都城が建設され、そこから東西南北に街道が走って、東は中国から西は地中海を結ぶ広大な貿易圏が生み出された。バグダッドの栄華や海洋を渡る商人たちの様子は、後に『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』などにも描かれた。日本の子どもにとっても、シンドバッドの冒険などはなじみ深いものとなっている。アッバース朝の時代には、イスラームの教えも、聖典の読誦学や解釈学、預言者言行録(ハディース)の収集と確立、法学や神学の整備などによって、体系的に示されるようになった。クルアーンや預言者言行録はアラビア語で記録されており、これらの学問を修めるにはアラビア語の知識が不可欠であった。文法学も整備され、アラビア語はイスラーム世界の宗教的・文化的な共通語となった。今日アラブ諸国として知られているのは、この時代にイスラーム化とともにアラブ化が進んだ地域である。アラブ化にはいくつか段階があり、この地域では住民が話す母語までもがアラブ化した。イランなどのペルシア語圏、中央アジア・トルコなどのチュルク語圏などでは、母語こそアラビア語にならなかったが、各言語がアラビア文字を採用し、語彙にも多くのアラビア語単語が入った。さらに時代が進むと、国際貿易の広がりとともに、商人たちがイスラームの教えを運ぶようになった。東アフリカや東南アジアなどのイスラーム化は、その典型である。地域によって多少の違いはあるが、おおよその流れとしては、アラビア半島で始まったイスラームは、14世紀間にわたって東西南北に広がり続けてきたと言える。広大な地域に展開するイスラーム世界は、しばしば「統一性と多様性」という言葉で語られる。神の

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