日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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36はじめにイスラーム教は、7世紀アラビア半島で預言者ムハンマドによって説きはじめられてから、世界各地へと広がった。10世紀までには西はスペインから東は中央アジアまでの中緯度乾燥地域を覆い、15世紀末までにはアナトリアから東ヨーロッパ、南インドから東南アジアを経て中国沿岸部へ、サハラ砂漠を越えて西アフリカへ、インド洋を渡って東アフリカへと伝播した。スペインからは後退したものの、現代では西欧、北米、南米、日本にもイスラーム教徒が分布する。イスラーム教徒が住む地域には、毎日の礼拝、あるいは金曜日の昼の集団礼拝を行うモスク(礼拝所)が建設される。そして、イスラームの法学や神学を学ぶマドラサ(学院)、あるいは死者が復活の日を待つ墓建築が発達する。特に聖なる人を葬った墓は、人々の参詣の対象となり、教団によって管理されるようになる。イスラーム建築という枠組みの成立については、後述するが、通常イスラーム建築という場合、前述したモスクや宗教建築だけでなく、歴史的な宮殿や市場、あるいは伝統的住宅をも含む。その理由として、以下の諸点が説かれる。イスラーム教が単に精神的な教えだけではなく、日常生活の道徳や規範をも包括した宗教で、イスラームという思想のもとに似かよった社会が営まれた。また、アラビア語で綴つづられた聖典クルアーンによって、アラビア語が共通語となった。さらにクルアーンに綴られた天国像を各地のイスラーム教徒が共有するようになる。その姿は、イスラーム教の発祥地アラビア半島における理想の地であった。そして、預言者ムハンマドの言行が信徒の規範となり、神を偶像化すること、具象

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