日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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37世界に広がるイスラーム建築 ―普遍性と多様性―的な絵画で宗教建築を飾ることを否定した。それゆえ、極度に抽象化された幾何学紋、文字紋、植物紋が発展した。こうした文様は宗教建築に限らず世俗建築にも用いられた。このようなイスラームという宗教の下での普遍性を、広大な地域、長大な歴史に展開するさまざまな機能の建築の中に見出すことができる。それは、イスラームという枠組みなしには考えられない文化交流である。とはいえ、材料や構法の相違、技術の進化などから地域や時代の特色も顕著で、多様性も観察できる。本稿では、モスク建築に話題を絞り、歴史的、地域的な広がりを見定めながら、双方の側面を考えてみたい。普遍性の根源―原型としてのイスラーム建築イスラーム建築の原型は、マッカのカアバ神殿[写真1]と、マディーナの預言者のモスク[写真2]にある。イスラーム教徒に課せられた毎日の5回の礼拝は、マッカのカアバ神殿に向かって行われる。加えて、イスラーム暦の12番目の月には、マッカへの大巡礼が行われ、イスラームの一体感を体感する。イスラーム教徒としては可能ならば生きているうちに一度は大巡礼に参加することを切望する。預言者ムハンマドが生まれた町マッカには、彼の生前からカアバがあり、当時は多神教の神殿だった。彼は、唯一神を信じるイスラーム教を説きはじめると、周囲の多神教徒から迫害を受け、共同体を引き連れて遠いマディーナの町へと逃れた。しかし、マッカのカアバを礼拝の方角に定め、8年後にはマッカを奪還し、偶像を一掃してイスラームの中心拠点とした。クルアーンによれば、カアバは神が人間に

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