日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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40与えた神の館である。カアバはキューブ(立方体)の語源のごとく、箱形である。ムハンマドの頃から矩形の囲いであったという。現在は、縦12m横10mの広さで、高さが15mの石造の建物である。高さ2mの基壇の上に3本の柱が建ち、天井を支える。ただし建物の中には何も置かれていない。大巡礼のとき、数万人の巡礼者がカアバの周りを左回りに巡る。その渦を映すかのように、イスラーム教徒の世界の中心には、中空の立方体があり、水紋のようにイスラーム教徒が同心円状に世界へと広がっていく。この世界観を支えるのはカアバである。預言者ムハンマドが、共同体を引き連れてマディーナに逃れた時、彼が建てたモスクが共同体の拠点となった。縦横50mほどの敷地を、干ひ乾ぼし煉れん瓦がの厚い壁で囲み、広い庭とした。マッカの方角の南壁と反対側の北壁に沿って棗なつめ椰や子しの柱を並べ立て、その葉で屋根を架け、有ゆう蓋がい空間とした。日中の日差しの強いアラビア半島では、露天の庭だけでなく屋内の空間が必要であった。柱の間には間仕切りがあったわけではなく、多数の柱が林立する開放的な空間であった。イスラーム教徒は神の前には平等で、礼拝のときにはマッカに向かって肩と肩を並べて横一列に並び、その列が増えていく。このモスクでは、日々の礼拝が行われただけでなく、子供たちの教育や話し合い、あるいは共同作業など様々なことが行われた。なお、ムハンマドと何人かの妻のために東側の壁に沿っていくつかの小さな部屋が仕切られていた。ムハンマドは亡くなると、東南の隅の妻の部屋に葬られた。このモスクは、その後のモスク建築の規範となった。敷地を壁で囲み、マッカの方角に柱を林立させて開放的な多柱室を造り、さらにフレキシブルで快適性をもたらす中庭(サハン)を置く。中庭の周囲

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