日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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41世界に広がるイスラーム建築 ―普遍性と多様性―には回廊(リワーク)が巡るようになる。そして、礼拝の場としてだけでなく、教育や集会、あるいは休憩などに利用され、共同体の拠より所となる。これら2つの建築は、聖化された立方体、中庭を用い数多くの人を収容できる空間造りが特色で、ともにアラブの基層文化を源泉とする。イスラームの理念的中核を設定し、基本的礼拝の場を提示し、イスラーム教徒の建築における普遍性の基盤を築いた。多様性の基盤―形態としての借入イスラームがはじまった頃、地中海世界はビザンツ帝国のキリスト教文化が覆っていた。ユダヤ教、キリスト教の聖地であったエルサレムに、預言者ムハンマドが生前に諸天訪問へ旅立ったという岩を記念して、691年に「岩のドーム」が建てられた[写真3]。岩の上にドームを構築し、二重の回廊で囲む建築である。この建築は礼拝を行うモスクではなく、聖なる岩を祀る建築である。新興の一神教たるイスラーム教勢力としては、既存の一神教の聖地に宗教的記念碑を残さねばならなかったのだろう。この建築の様式は、キリスト教会堂の中で、集中式教会堂と呼ばれるものと類似している。ガラス・モザイクをビザンツ帝国の工人が担当していることからも、キリスト教会堂の様式や技法が用いられたと言えよう。集中式教会堂は、洗礼堂や殉教者聖堂などに使われる。その後、イスラーム建築においては、「岩のドーム」の形は、死者が復活の日を待つ墓建築へと応用される。706年に完成したダマスカスのウマイヤ・モスクにも、キリスト教会堂との共通性がみられる[写真4]。

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