日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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44モスクとしてマッカに向かって横幅の広い礼拝室を持つ。礼拝室を中庭からみると、ラヴェンナの教会堂にビザンツ宮殿を描いた絵とよく似ている。モスクの必須要素は、マッカの方角を指し示すミフラーブ(壁がん)である。入念な細工を施され、アーチ形をしているものが多い。預言者ムハンマドの時代には、壁に槍をたてかけて礼拝の目印にしたという。金曜日の昼の集団礼拝が行われる大モスクには、ミフラーブの横に礼拝の先導者が上るミンバル(説教壇)がおかれる。預言者ムハンマドが、マディーナで説教するときに3段の台に腰掛けたことに因ちなむという。そして、日に5回の礼拝の呼びかけを行うミナレット(光塔)も、ムハンマドの時代にはなかったが、次第に形を整えていく。こうした要素は、ユダヤ教のシナゴーグやキリスト教会堂に類似する装置を見出すことができる。このように、新興のイスラーム教徒が礼拝施設としてのモスクの様式を整えていくときに、既存の建築文化を拘こだわりなく取り入れていった側面が明らかである。無論、ユダヤ教、キリスト教といった一神教の造形様式だけでなく、各地に根付いていた伝統的建築文化を吸収し、イスラームの規範のもとに再構築したのである。こうした拘りのなさは、イスラーム教徒の建築文化の多様性の根源となっている。普遍性の伝播―広域への様式普及イスラーム教は、成立以来、拡張を続けていくが、建築様式の伝播には大きな3つの波が観察できる。

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