日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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61世界に広がるイスラーム建築 ―普遍性と多様性―て進められたマッカの聖モスクとマディーナの預言者のモスクの大改修もこの範はん疇ちゅうに属する。普遍的イスラーム建築を目指し、多様なる歴史的要素を入れ込むという、それぞれの建築での工夫は読み取れるが、この解法はすでに19世紀の植民地で試行された。加えて、ドームやアーチをはじめ、煌きらめくアラベスク文様、錯綜するムカルナス(鍾乳石飾り)、イスラームを表象するアラビア文字などを混在させ、オイル・マネーをつぎ込んで、イスラーム建築のさらなる様式化を図っているかのようだ[写真15]。復古様式は、現代的技術を用いて過去のある一つの様式へ傾倒する。近年、アジアやアフリカでの大規模モスク建設は、この範疇に大きく偏る。モロッコのカサブランカにあるハサン二世モスク(1993年)は、土着のモロッコの様式を採用する。しかし、ドバイのジュメイラ・モスクはマムルーク朝エジプト風[写真16]、アブ・ダビのシェイフ・ザーイド・モスクはムガル朝インド風で、都市の歴史と採用された様式とをどのような分脈で結び付けるのか、理解に苦しむものも多い。レバノンのベイルートのムハンマド・アル・アミン・モスク(2005年)[写真17]は、オスマン朝様式を採用するが、1516年にオスマン帝国に編入されたベイルートで、21世紀の造形という点では合点がいかない。過去の様式の踏とう襲しゅうという点では、必ずしもオスマン朝様式だけが用いられるわけではない。しかし、日本の東京ジャーミィをはじめ、トルコ人の故地中央アジアにも多い。過去の大イスラーム帝国の栄光、あるいは汎トルコ主義を求めて、世界各地にオスマン朝風の造形が蔓延することも現代モスクの趨勢である。

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