日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
69/220

65世界に広がるイスラーム建築 ―普遍性と多様性―様式の借入と組み合わせ―日本のモスク建築前述のような潮流の中で、日本のモスク建築を位置付けてみたい。日本で初めてモスクが建設されたのは、西欧でイスラーム建築という括りが成立した後である。1935年に神戸モスク、1938年に東京ジャーミィが完成した。神戸モスクは、いまだに当時の建築が現存する[写真18]。建築家は、チェコ人のヤン・ヨーセフ・スワガーで、ライトの帝国ホテル建設に伴い来日したアントニン・レーモンドの弟子にあたるモダニズムの建築家である。神戸モスクは、前述の第二の折衷様式に該当する。ある一つの様式に収しゅう斂れんするわけではないが、インド風の膨ふくらむドームと室内の折上天井、ペルシア風の二基一対のミナレットと正面入り口の大アーチ、エジプト風のミナレットの分節など、各地由来の要素が混在する。一方、今は、老朽化によって撤去された東京ジャーミィも、同じく折衷様式に相当するものであった。全体的な趣は、ドームとミナレットの形からマムルーク朝エジプト風にまとめられているが、中央アジアのリバッティ・マリク風の入口を囲む緑りょく釉ゆうのピシュターク、およびその内部のファーティマ朝風の竜骨アーチ、コルドバのメスキータを思わせる室内のキブラ壁の2色のゼブラ紋様のアーチなどのイスラームの要素が、モダニズムを思わせる縦長のガラスを多用した側面ファサードの分割と混在している。イスラーム風の要素は、西欧から移入されたサラセン様式や、当時出版されていた建築史の著作に掲載されたものを、建築家がモスク建設に際して利用したのであろう。サラセン様式は、赤坂離宮に見るように、洋館の喫煙室でも好まれた。一方、西欧列強の進出の影で、エジプトで研究をしたクレスウェ

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です