日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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67世界に広がるイスラーム建築 ―普遍性と多様性―ルをはじめ、それぞれの地域でのイスラーム建築史研究が深化を遂げていた。日本のモスク建設に際して、イスラーム建築の認識に基づいた普遍性を表現するために、いくつかの歴史的要素を借り入れることによって表現したと思われる。同じ頃、雲南地方で建設された清真寺を見れば、いわゆる中国風の建物で、形態における普遍性を見出すことは難しい。日本には、意識的なイスラーム建築成立以前にモスクが設立されなかったので、土着の伝統様式を表現するモスク建築は成立しなかった。2000年に完成した東京ジャーミィは、先述のごとく、16世紀のオスマン朝建築の様式を写したものである[写真19]。地権や歴史的経緯から意図的に採用された様式で、建設に当たっては日本の建設会社が担当したものの、トルコ人の建築家が設計し、トルコ人技術者が参加し、鉄筋コンクリート造ながら本格的なオスマン風に仕上がっている。ただし、現在日本にあるモスクは、こうしたモニュメンタルな建造物ばかりではない。既存のビルをそのまま利用したり、あるいは一室を転用したり、無理やり既存の建築要素や、既存イスラーム建築様式の採用に固執しないモスクも数多く存在する。おわりに―イスラームが希求する建築とはムハンマドにはじまるイスラームは、世界各地に壮麗で美しい建築を残した。その根底には、カアバを極とする世界観があり、美の理想にはクルアーンが語る天国像があった。イスラームの拡張とともに、

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