日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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73イスラームのグローバリゼーションと日本ム思想の中に、現代的なグローバリゼーションに通じる概念があることには、気づこうとさえしない。そもそもセム的三宗教の中では、当初からイスラームが最も顕著に多元主義的である。7世紀初頭のアラビア半島で見られた頑迷な部族主義や血縁主義を廃し、すべての人間を対象とする普遍的な宗教として起こったイスラームのなかでは、「グローバリゼーション」という語の本来的な概念が、つまり「地球上のすべての人間は神の被造物であり、神のもとでまったく平等である」という概念がみられるからである。この概念こそが、急速なイスラームの伝播と拡大につながったと考えられる。しかし、今日のグローバリゼーションは、アメリカ中心主義という新しい衣をまとっており、その枠組みは西洋中心的な「自己認識」にすぎない。つまり今日のグローバリゼーションは、特定の政治的・経済的な意図を伴った囲い込みであり、世界の力関係によって形成されている一種の虚構でしかない。そこから排除された「他者」には対等な関わりが持てないシステムとなっていて、決して字義通りの普遍的なものではなくなっている。イスラームだけではなく、世界宗教といわれる宗教が本来持っていたグローバルな側面と、現代のグローバリゼーションとの間に大きな断絶があることが、今日の宗教をとりまく種々の悲劇の要因となっていることは否めない。イスラーム世界で展開されるさまざまなイスラーム運動は、戦闘的急進的な運動も含めて、一般に今日的なグローバリゼーションの外側に位置づけられる。「文明の衝突」の概念を提唱した国際政治学者、サミュエル・ハンティントンなどの主張に代表されるように、「野蛮な」文明と断じられ、イスラームは根本的に多元主義や民主主義、人権などといった近代的な価値観とは相容れないと批判される。しか

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