日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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74し、イスラームには、西洋的な民主主義や人権思想とは基盤が異なるものの、それに近い社会観や人間観が存在する。今、イスラームの内側においても、これらの基本的観点を踏まえながら、緊急の課題として「国際化、グローバリゼーション、対話の可能性」が研究されている。現代の「グローバリゼーション」が、異なった伝統的文化や宗教、習慣などの違いを認めあいながら形成される「世界はひとつ」という枠組みであるなら、宗教間対話が成立する可能性があると思われる二 。現代は多元化とグローバリゼーションが予想以上に進展した時代であり、私たちはこれから、ポスト・グローバリゼーションの時代の世界を見つめ、異文化理解に基づく共存体制を進展させていかなければならない。前述のように、今日の世界には二つのグローバリゼーションの相克があるとすれば、アメリカ中心のグローバリゼーションと対峙するもう一方のグローバリゼーションについても、真摯に考察しなければならないのである。二.イスラームと「共存」―すべての宗教に共通する教義伝統的なイスラーム神学思想において、今日的な意味での「共存」(co-existence)が意識的に取り上げられたことは、ない。クルアーンは神が人間を創造し、地上の神の代理人として正しい道を示したが、人間は、神に感謝して信仰する者と、神を信じない者とに二分したと記している(たとえばアルインサーン76章3節など)。このことは、神が創造したこの地上に、信仰者と不信仰者という二種類の人間が存在することを示し

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