日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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76が比較的有効に機能したのは、イスラームの優位性を認め、イスラームによる支配を受け入れることによって実現した共存体制であり、決して「平等な権利と義務」による社会体制ではなかった。このような社会体制下の保護民が「二級市民」としての苦渋の選択を強いられていた、という見解に対しては判断が分かれるが四 、一握りの権力者に支配された社会では、現実にはイスラーム教徒であっても保護民とほとんど変らない被支配者の暮らしを余儀なくされていたことは、あきらかである。したがって、「イスラームにおいてのみ他宗教の信者との共存が問題となる」という設問は、最初からイスラームに対する偏見や誤解を伴っているというべきである。どの宗教においても、他宗教の信者との共存を成り立たせるためには、自分の宗教が自分にとって正当であるのと同様に、他者の宗教が他者にとって正当なものであることを認め、それに敬意を持つことであるが、さらに重要なことは、自分の主張を他者に押しつけ、自分の判断の次元で他者を判断しないことである。しかし、このような条件は、言うはやさしいが、現実に遂行することはきわめて難しい。今日的な「共存」が、さまざまな宗教の信者が、同じ地域社会で平等な権利と義務のもとで、ともに暮らすということを意味しているのであれば、それは、どの宗教においても決して平等ではない「信仰者」と「不信仰者」が共存することにつながる。この問題をどのように解決することができるのか、今、最も問われることかもしれない。

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