日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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83イスラームのグローバリゼーションと日本六.新しい対話と共存を現在、イスラーム世界では、さまざまな近代思想の相克が見られる。近代主義者の代表格であるエジプトのアシュマーウィー(1932年〜)も、エジプト出身でカタール在住の、現代のイスラーム運動を代表するカラダーウィー(1926年〜)も、ヨーロッパで活動を展開するラマダーン(1962年〜)も、アメリカで活躍するインド出身のシーア派のサチェディーナ(生年不詳)も、高名なシーア派学者ナスル(1933年〜)も、思想的な立場が異なっていても、現代のグローバリゼーションの中での対話と共存を模索している。中世のアッバース朝(750〜1258年)下で実現した多宗教・多文化・多民族の共存は、イスラームの支配権を認めるという条件下であったが、今日では、世界中で活躍するイスラームの思想家たちが、さまざまな立場を掲げながらも、理性主義的傾向を持つ議論を展開することによって、イスラーム教徒と他の宗教の信者たちとが平和的に共存することができる地平を作り出すことができるはずである。そこでは、もはや、どの宗教が支配権を執るかということは問題にされず、どの宗教を信じていても、人間としての尊厳と権利と義務が尊重される「新しい共存」の世界であるべきである。人間に可能な共存とは、「神における共存」でしかないであろう。しかし、信仰的には、絶対的な神であるゆえに「神と被造物の共存」が可能となるのではないかとも思える。クルアーンに、神は絶対的な高みに存在するが、同時に「人間の頚けい動脈よりも人間に近く在る」(カーフ50章16節)と記されている。このような「いと高く、いと近く」在る神のもとでは、「神と人間の共存」は創造的な意味をもって、

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