日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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84人間に決断を迫る究極的な「共存」となる。このような「神と人間の共存」のもとでは、人間同士の差異はなんら問題にもならず、共存を阻む要素さえ存在することはなくなるのである。スイスを中心に欧州で活躍する前出のラマダーンは「神とともに在ることは、人類とともに在ることである」として、これを「タウヒード」(神の唯一性)の本来の意味であると説明している。このタウヒードは、4つの次元を持って展開しているが、まず、家族との関係から始まり、次に五行の宗教的儀礼を実行することによって集合的側面を持つことになり、信仰者はすべて信仰共同体に所属する。第三にこの信仰共同体は「信仰告白」シャハーダによって結ばれる「信仰、感情、同胞、運命の共同体」ウンマとなる。すべてのムスリムは個人として信仰に入るが、同時にひとつのウンマの成員としての義務を負うことになる。さらに第四の次元にいたると、ウンマは、ムスリム以外の全人類に対しても、あらゆる状況下において正義と人間の尊厳の側に立つことによって、自らの信仰について証言する義務を負うことになるのである八 。ラマダーンはムスリムが全人類に対して正義を行うという原則が、タウヒードの実践であり、ムスリム共同体全体の任務を真に理解することに基づいていると言う。このような「共存」を、ラマダーンは伝統的な「イスラームの家」dār al-Islāmと「戦争の家」dār al-h3arbという区別から、「告白の家」dār al-shahādahへと転換をはかるための鍵概念であるとしている。彼は、さらにヨーロッパに住むムスリムにとって、もっとも重要な課題はシティズンシップであるとして、ムスリムの側からは、移住し共存して住む運命にある土地・国家・都市への忠誠を守ることを、ヨーロッパ社会の側からは、ムスリムにシティズン(市民)としての平等な権利と義務を与えることを要求する。ラマダーンの主張する「ヨーロッパ社会」を「日本社会」と置きかえて検討することもできよう。日

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