日本に生きるイスラーム ―過去・現在・未来―
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92イスラームと日本人西暦7世紀にアラビア半島で誕生したイスラームは、古代文明発祥の地オリエントに生まれた啓示宗教で、ユダヤ教、キリスト教の姉妹宗教であり、この三つの宗教の背景はいずれも砂漠という似た環境をもち、同じセム人種の習慣や伝統を有する。イスラームと聞くと、アラブの地域色だけを殊更に強調する傾向が見られるが、決してそうではない。現在、その信徒は世界中に住んでおり、既に14世紀の時を積み重ねて、人間の生死の意味を教示してきたが、イスラームを知るには、前述の一神教を全て比較しながら理解する必要があるだろう。世界史に大きな影響を及ぼしたイスラームであるが、日本では未だに不可解な宗教と思われ〝さわらぬ神にたたりなし〞とばかりに、無関係を決め込んでいる人達が少なくない。さらに〝世界人口の4分の1はイスラーム信徒である〞という事実の前で、1億2,000万の人口を持つ日本に〝イスラーム教徒の日本人が皆無に近い〞のは不思議だと世界から見られているのだ。しかし、「日本にイスラーム信徒が少ない理由は何か」に対する答えは、日本の置かれた地理的、歴史的な立場から眺めれば明らかとなるであろう。地理上で実際に日本はアラブから最も遠く離れた場所に位置している。よく知られたアラブの伝承に「知識を求めて中国まで行け」とあるが、当時で遥か遠方を表現した中国よりもさらに日本は遠かった。だから日本は、アラビア語で〝未知の国〞という意味を込めた「ワークワーク(Waqwaq)」の名称で長い間呼ばれてきた。これは〝倭国〞がマレー語などに多い反復形式で伝えられたものという。また、

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