サウジアラビアと日本 ―その素顔と絆―
125/222

121東京への別れの挨拶として大使委任状の国王陛下への奉呈式を体験した。その儀式は歴史の古いものであり、厳かで、威厳に満ちていた。各国の大使たちは、王室の馬車に乗って、ロンドンの各出発地からバッキンガム宮殿へと、荘厳な車列を作って移動した。そのときに、私が大使としてある国に赴任して、このような儀式に参加して、このような王室の馬車に乗ることができる日が実現するのはいつになるのだろうか、とどれほど憧れ、また考えたかを、今でも鮮明に記憶している。その日から22年も経たないうちに、王室ではなく、天皇家の馬車に乗っている自分がいたのだった。私はロンドンではなく、東京の出発地から発車し、大使委任状を奉呈するために皇居に向かっていたのだ。憧れを抱いた日から実現するまで、その間に流れた時間は、たったの8,030日でしかなかったのだ。私は日本の起源や歴史や文化や国民に関する多くの文献を読んだが、読書と実際の生活とはまったく別のものである。私は未だに、来日直後の2日間の体験をしっかりと覚えている。大使館に初出勤したのは勤務時間の10分前であったが、全ての日本人スタッフが既に出勤していたことに驚いた。日本語の辞書には、「遅刻」という項目が存在しないのだろうか、という印象を持った。全てのスタッフを集めて会議を行うよう命じ、挨拶と自己紹介を行い、事務室に戻った。そのおよそ5分後に電話がなった。「もしもし、大使閣下でいらっしゃいますか?」「そうだ。」「私は大使閣下のドライバーです。」「そうか、で、どのような用件かね?」

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です