サウジアラビアと日本 ―その素顔と絆―
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135日本とサウジアラビアの間に「虹の橋」を架けようも捉えることができるかもしれません。私が注目するのは、同大学がもうひとつの側面を有しているからです。アブドッラー国王は、KAUSTを「科学・技術の殿堂」とともに「智慧の家」とも意義づけています。現代史においてこのような意義づけをした理系の大学はあるでしょうか。科学・技術の発展が経済発展の原動力になり、人間の生活をかつてないほど便利にしてきたことは論を待ちません。現代人は皆、科学・技術進歩の恩恵を受けてきました。しかし、よく考えてみると、科学・技術そのものは「中立」的な存在です。これからプラスの価値を生み出すか、マイナスの価値を生み出すか、優れて人間の智慧に依るところが大きいといえます。原子力技術は、平和利用として医療分野等に利用できる反面、大量破壊兵器としても利用できます。日本はその原子爆弾の最初の被害国です。わが国には、その最後の犠牲国であるべしとの強い思いがあります。そのような意味で、アブドッラー国王が、KAUSTを「智慧の家」との位置づけを行っていることの意義は極めて大きいと言えましょう。現在日本は、積極的に科学・技術外交を展開しています。私は将来、外交の分野においても「倫理」「道徳」といった問題も扱うことになるであろうと予想しています。その観点からも、後述する文明間対話の果たす役割が大きくなっていくのではないかと感じています。(二)次に、私はアブドッラー国王の宗教間対話イニシアティブに注目しています。2008年4月、イスラーム各派の指導者をマッカに招き、宗教間対話を開始しました。その後同年6月、スペインのマドリードでイスラーム以外の宗教者との対話を行い、同年11月には国連でも対話を実施しています。明けて2009年9月にはジュネーブでのフォローアップ会合が開かれています。

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