サウジアラビアと日本 ―その素顔と絆―
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78サファル月の月末のある日の朝、大使執務室で普段は見慣れない大使の表情に気づいた。その理由は、私に領事の予算も含めた経理の職務を任せるよう、本省からの指示があったということであった。大使は私に、事前にこの指示を知っていたのかどうかをたずねてきたので、知りませんでしたと答えた。そこで大使は、領事部の事務と予算を担当していた山田さんに対し、予算に関する一切を引き渡すよう命じた。これが第3のステップで、それによって私は大使館業務で望んでいる地位へ昇格することとなり、現地スタッフから尊敬をえることとなった。私は意欲を持って、書類やタイプライターを事務室へと運び込んだ。その事務室からは東京タワーと大使館地区が見え、目を足元に移すと、そこには石の柱が立ち並ぶ墓地が公園のようにも見えた。私は同僚のユーセフ氏に対し、もし私より地位の高い同僚が赴任してきた場合には、その部屋を明け渡すことを約束し、大使館の金庫から切手や旅券を引き出し、経理の記録の整理を、本省で訓練した原則に従って行った。山田さんから教わったのは、領事部の支出の記録の方法である。それは毎月の会計報告書の準備方法と同じであり、かつ、経理の原則にも合致するものであったので、それらを英語からアラビア語に翻訳することは容易であった。旅券や切手を受領したように、それらを金庫に戻した。本省に行った業務について報告し、また会計報告書のコピーを提出して、1383年サファル月からはじまる大使館の経理状況を説明した。

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